姉妹と子供たちへの第１０報（２２日）

おばあちゃんは前に言ったように
頻尿治療のために
 
ベサコリン散５％０．２０ｇを
投薬されています。
 
その効果が出たかどうか
確認する為に
 
今朝５時に
バルーンを外しました。
 
午前中は快調
一度も「トイレへ」と言わず
 
１度も言わないのも変だなとは
思ったのだけれど
 
『薬の効果か！』と
期待半分で喜んでいました。
 
ところが
午後になると大転換
 
３０分おきに
トイレ通いが始まりました。
 
バルーンで空になっていた
おばあちゃんの膀胱が
 
半日経って満タンになり
そこから数ＣＣずつを排尿する
 
元のパターンに戻ったのです。
 
だから
 
『これじゃあ
看護師さんも付き合い切れないだろう』
 
と、僕はバルーンの再装着を
お願いしたのです。
 
これでおばあちゃんも
 
『おしっこに行きたい、行きたい』の
ストレスが無くなり
 
ゆっくり休める筈です。

姉妹と子供たちへの第９報（２１日）

「飛来さんねえ
 
入院前に戻そうなんて
そりゃあ飛んでもない話ですよ！
 
こう言っちゃあ何ですが
 
何てったって
１０３、１０３歳ですよ！
 
入院させることがそもそもの元凶
それが体を弱らせちゃうんですよ。
 
入院のたんび
 
ガクンガクンって
体力無くなって行くんです。
 
リハビリして
 
元に戻して下さいって
申し込まれてますが
 
リハビリして体力戻そうなんて
飛んでもない話！
 
ちょっと無理すりゃあ
骨折ですよ、骨折。
 
リハビリの先生達だって
困ってるんですよ！
 
ご飯だってね
食べなきゃあいいんです。
 
口から食べなきゃあ
 
誤嚥性肺炎にだって
なること無いんですよ！」
 
主治医がわたしに言いました。
 
多分
先生は正直な先生。
 
その正直なお言葉に
僕は返す言葉もなく
 
「そうですよね」と、ただ肯くしか
ありませんでした。
 
だけど、主治医は
 
そう言いながらも
手配はしてくれ
 
おばあちゃんは毎日
 
ゲホゲホ言いながらだけれど
キザミ食を口からとり
 
不味いと言いながらだけれど
とろみの付いたお茶を飲み
 
よろよろしながらだけれど
リハビリ室へ通い
 
復帰訓練を続けているのです。
 
『その気力や良し！！！』
じゃあありませんか！！！

ね、みなさん？

姉妹と子供たちへの第８報（２１日）

今日はいつもの美容師さんに
病院まで来てもらい
 
おばあちゃんは散髪を
してもらいました。
 
テーブルの上に置かれた
大きな鏡の中で、おばあちゃんは
 
入院以来なかった最高の笑顔で
笑っていました。
 
「おばあちゃんは
いくつになっても女だなあ！」
 
って、美容師さんに感謝しながら
僕は思いました。
 
美容師さんは
 
「庭に咲いている花なの」と言って
きれいな花束を持って来てくれました。

　おばあちゃんは昔から
　たくさんの花好きの人とめぐり合い
 
　永いお付き合いを
　させてもらて来たのです。

 

姉妹と子供たちへの第７報（２０日）

「ありがたいねえ、嬉しいよお。
忙しいのに来てくれて」
 
見舞いに来てくれた勉君夫婦に
おばあちゃんがお礼を言いました。
 
「ごめんなさいね。
思っているのに遅くなっちゃって」
 
「いんええ
みんな忙しいんだからお互い様よ。
 
その気があったって
なかなか来れないものなのよ。
 
もう部落の人、ほとんどには
会ったんだけどね」
 
おばあちゃんは
責める気はないのだけれど
 
あれやこれや
ごっちゃに話すので
 
時として
 
側にいる僕がハッとするような
会話になる時もあるのです。

姉妹と子供たちへの第６報（１９日）

おばあちゃんとの会話は
入院してからも変わっていません。
 
「これ、ちょっと酸っぱくて
美味しいわよ。
 
兄ちゃんもちょっと食べてみて！」
 
おばあちゃんが食事のたんび
僕に勧めます。
 
「お母さんねえ、僕はねえ
他人の食べかけなんか食べないんだよ！」
 
「そんなこと言ったって、兄ちゃん
私が噛んで食べさせてたんじゃない
 
赤ん坊の頃！」
 
と、遠い昔のことを引き出して来て
勧めるのです。
 
「兄ちゃん寒くない？
 
兄ちゃんに倒れられると私
困るのよ。
 
これ、これ何だったっけ？」
 
「毛布じゃない、も・う・ふ」
 
「そう、これ持ってって
かけてて頂戴よ」
 
と、おばあちゃんは
 
自分のかけてる毛布を差して
言うのです。

おばあちゃんはやっぱり母親

暖房が利いた部屋にいるのに
僕が風邪をひかないか

始終気にかけているのです。