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「もう書けない!」
 
母がそう言って
突然ペンを置きました。
 
正月が終わって
 
来る人が来てしまい
帰る人が帰ってしまい
 
誰も来ない日が数日続きました。
そんなある晩のことです。
 
8時半になると
 
母はいつものように
日記を書き始めました。

3c25ff14.jpeg 
 平成22年3月8日現在
 母は未だ日記を書いています





だけどペンが進まぬ様子
ただじっと天井を見上げておりました。
 
そして突然
「もう書けない!」と、ペンを置いたのです。
 
「だって私は毎日
何の変化もないのよ。
 
何の進歩も無いの
ただ忘れて行くだけ。
 
私はただ炬燵に座って
人の来るのを待ってるだけ。
 
誰かに頼らなきゃあ
外にだって行けないの。
 
誰も来なけりゃあ
世間話ひとつ出来ないのよ。
 
新聞読んだって、テレビを観たって
何にも頭に入らない。
 
新しい事が
何にも入って来ないのよ。
 
さっき食べた夕飯だって
 
何が出ていたんだか
もう思い出せないのよ。
 
こんな状態で
何を書けばいいの!」
 
母が堰を切ったように
言い募りました。
 
母の焦燥を前にわたしは
 
いつもの軽口をたたく事が
出来ませんでした。
 
わたしはただ
 
「そうだよね」って
言うしかありませんでした。
 
 
 
わたしは母に言われて
改めて母の苦悩に思い至ったのです。
 
言ってよかったのか、悪かったのか
 
わたしには「そうだよね」という
言葉しかありませんでした。
 
だけど、ありがたいことに
 
 
母は言うだけ言うと
またペンを取り上げてくれたのです。
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