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「何もかも
出来なくなっちゃって・・・」
新聞を見るのを止めた母が
ため息をついて、弱音を吐きました。
「ため息をつくなんて
お母さんらしくないじゃない!」
そう応えたわたしですが
母の気分を盛り上げたくて
いつもの褒め言葉を
続けました。
「お母さんねえ
お母さんのこと
みんなが感心してんだよ。
お母さんみたいな
年の取り方をしたいって
世間の人
みんなが言ってんだからね。
みんながお母さんのこと
目標にしてんだから
みんなの為にも
頑張らなくっちゃあ!」
わたしは
いつものように
『世間のみんな』を引っ張り出して
励ましたのです。
ところが
「かんしんしてるって
寒い方の寒心じゃないの?」
母が突然
突っかかって来たのです。
母が自分から
突っかかってくるなんて
かつてないこと。
ちょっとびっくりした
わたしですが
そこはそれ年の功
間髪を入れず反撃したのです。
「あれえっ!
お母さんって
そんな
ひがんだ事を言う人だったんだ!
みんなに
教えてあげなけりゃあ」
わたしは
そう脅しをかけたのです。
母はわたしのこの言葉で
口をつぐみました。
『世間のみんな』に弱い
母のこと
これで一件落着と
わたしは思っておりました。
だけどしばらくして
母がポツンと言いました。
「でもね。
弱音を吐くとね
少し気が楽になるのよ」
母がそうぽつんと言ったのです。
やっぱり
母は無理して頑張っています。
無理しながらも、衰えて行く不安と
必死に戦っているのです。
励ます言葉を持たない
わたしは哀しいかな
ただ見守っているしか
ないのです。