[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
それより30分ほど前のこと
「じゃあお母さん
母とわたしのやり取りを
聞いていた長姉が言いました。
「話してるたって太郎!
太郎はお母さんのこと
ああでもない、こうでもないって
ただ注意してるだけじゃない。
そんなのが会話なの!?
そんなんでいいのなら
私にだって話せるわよ!」
と、安心したように
言いました。
「お母さんとこに来たって
いいんだけどね。
家族のことを話し終えたら
もう話すことが無いのよ。
だってそうでしょ。
テレビの話をしたって
雑誌の話をしたって
お母さんはもう
興味が無いんだもの。
みんなは一体、何話してるのよ」
と、長姉はいつも
不思議がっていたのです。
たまにしか来ない長姉は
母との話題に困っていました。
何を話したら
母が乗ってくれるのか
分らないのです。
そんな長姉だから
母の所へ来ても
最初にちょっと話すだけ。
後は炬燵に寝転んで
ずうっと雑誌を読んでいます。
だから母が不満を言うのです。
「翔子が来てくれたって
ほんとにつまらないのよ。
話もしないで
本読んでるだけだもの」って。
そんな長姉が
母とわたしのやり取りを聞いて
自信をもってくれたのです。
「あんな会話でいいの?!
そんなんでいいのなら
私にだって話せるわよ!」
って、そう言ってくれたのです。
もちろんわたしは
『注意ばかりの会話』でいい
と、思っているわけではありません。
だけど黙っているより
注意でも何でも
言葉を交わすことの方が
遥かにいい
と、そう考えてはいるのです。
そんな言葉が
あるかどうかは知りません。
だけど母は
食べた物、飲んだ物が
気道に入ってしまい
時々酷く咳き込むように
なりました。
ご飯を食べている時など
何気なくしゃべった途端
咳き込みます。
お茶を飲んだ時でさえ
咳き込む事があるのです。
眉間にしわを寄せ
額に血管を浮き上がらせ
硬く閉じた目尻に
涙を滲ませ
首のあらゆる筋を
浮き上がらせ
顔を真っ赤にして
咳き込むのです。
咳き込みは
ほんとに長く続きます。
仰向いて咳き込むので
一度気道から出た異物が
また入っているんじゃないか
と、思うくらい続くのです。
背中をさすった方がいいのか
悪いのか
叩いた方がいいのか
悪いのか
周りにいるわたし達は
あれこれ考えるだけ
なす術がありません。
ただじっと
咳が静まるのを待つばかり。
「死ぬかと思った!
こうやって
死んで行くのかしらねえ」
と、母がゼイゼイ言いながらも
一段落して
そうしゃべりだすのを
じっと待つしかないのです。
で
妻が買い込んできたのが
写真の「巻き笛」。
子供の頃
縁日で買って遊んだ
『吹けば
ピューと鳴りながら伸びる』
あのおもちゃです。
母はこれで今毎日
口と肺の鍛錬をしています。
そして心なしか
母の咳き込む回数が減った
ように思える
今日この頃です。