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雛祭りの晩
わたしは母に
娘たちに
電話をするよう勧めました。
だけど
「やっぱり、雛祭りだね。
誰もいないや」
めんどくさがる母をやっと説き伏せ
電話をした翔子や芽衣子はおらず
他の2人の姉妹も
わたしの妻も電話には出ず
母は結局この晩
わたし以外の誰とも
話せなかったのです。
1日のほとんどを
ベッドの中で過ごしている母には
わたし達が行かない限り
話し相手がいないのです。
そんな1日がどんなに長く
どんなに寂しく
どんなに辛いものか!
母は入院以来
『寂しい』とか『辛い』とか
そんな言葉を
吐いたことはありません。
だけど、わたしは母の
「もう、そういう時期は過ぎた」
という言葉の中に
ベッドの中でただ1人
誰かが来てくれるのを
ひたすら待ち続けた母の
歯を食い縛って耐えた日々の
辛さを思ったのです。
「もう、そういう時期は過ぎた」
そうして母はもう
待ちくたびれてしまったのです。
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