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とうとう、その時が来た。
「絶対、飛ばさないで!
お母さんの事は
もう
病院に任せるしかないんだから」
芽衣子には
そう言われてはいたけれど
わたしは焦る気持で
車を飛ばしました。
道中、頭に浮かぶは
ただ母のこと。
しわくちゃだったけれど
明るかった母の顔
優しかったけれど
怒ると怖かった母の顔
曲った背中で
よちよち歩いた母の姿
ハイヒールで颯爽と
姿よく外出した母の姿
「もっと食べて、もっと食べて」
と、稲荷寿司を作ってくれた
少年の日々の事。
妹を泣かせ
追っかけ回された
幼かった日々の事。
そして
薄暗い病室
見守る人もなく
独り寂しく横たわる母の姿。
わたしは
父の死に
立ち会えなかった男です。
思う事は全部過去形。
「間に合わないかも知れない」
当然のように
わたしは
母との別れを
想像していたのです。
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