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「俺はゆんべ
酔っ払っちゃってさ
愚痴話ばっかり
しゃべっちまって
大切な事話すの
忘れてた」
盛り下がった2次会の
翌朝早く
わたしはタケちゃんの電話で
起されました。
「俺はね、見たんだよ。
死んでく親父が俺の方見てさ
ニヤって言うか
ニコって言うか
ともかく頬を緩めたのを
見たんだよ。
弟たちも嫁さんたちも
一応、臨終に間に合って
みんなで、親父のベッド
囲んでいたんだよ。
だけど、親父は
俺の方だけ見てね、頬緩めたんだ。
おまけに
俺の方に、手まで
伸ばそうとしたんだよ。
だから俺は
『親父、分ってるよ!
いろいろありがとう。
俺は親父に生んでもらって
ほんとに感謝してる。
ほんとにご苦労さんでした』
って、親父の手握って言ったんだ。
そして、そのまま
1分経ったか2分経ったか
親父は俺に
手を握らせたまま逝ったんだ。
もちろん、弟たちゃ
寂しかったと思う。
折角集まって来たのに
最後の最後
親父に無視されたみたいに
なっちゃったからね
弟たちゃほんと
やり切れなかったと思うんだ。
だけど、親父にゃあもう
ひとりひとりの手、握るなんて力
無かったんだと思う。
でもね、無かったんだとは
思うんだけれど、俺は嬉しかった。
親父を看た俺の、永年の苦労が
報われた気がしたんだよ。
俺は器のちっちゃな男だからね
親父が俺だけに笑った、手出した
それ位の事がもの凄く
嬉しかったんだ。
分るかなあ、俺の気持ち。
馬鹿みたいな話だと
思うだろうけれど
これからお母さん見送る
飛来にさ
悔い残さないように、もうちょっと
頑張ってもらおうと思ってさ
朝っぱらから
電話したってわけさ」
タケちゃんはそう言って
電話を切ったのです。
電話を切ったのです。
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