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『やったりもらったりの楽しみ』
と言えば
先日、介護施設に
入所されている奥さんと
話をしました。
奥さんは認知症と
診断されていますが
普段の会話には困りません。
その奥さんが言われたのです。
「私はね、お友達から
何にももらわないの。
誰かが、飴をくれるって言っても
断るの。
その代り
お友達にも上げないの」
と、言われたのです。
「だって、奥さん
やったりもらったりって
飴玉ひとつでも楽しいでしょうに
どうして、しないんですか?」
と、わたしは
思わず聞き返しました。
「そりゃあ、楽しいわよ。
だけど、息子が言ったのよ。
『もらい借金』になるから
止めとけって!」
と、奥さんがちょっと寂しそうに
だけど、息子の言う事だからと
納得しているように答えました。
『もらい借金』
そんな言葉があることを
わたしは今まで
全く知りませんでした。
息子さんが何故
『もらい借金は止めとけ』と
飴玉のやり取りを禁止したのか
わたしは
その理由を知りません。
だけど、可哀想に奥さんは
息子さんの言葉に従って
やったりもらったりの
ささやかな楽しみを
失くしていたのです。
奥さんが使う
シルバーカーの中には
わたしが持参した
飴玉の袋が入っています。
わたしは
みんなから独り離れ
部屋の片隅で飴玉を舐めている
奥さんを想像して
これが母だったらと
胸が詰まったのです。
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