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「もう・・・駄目かねえ」

母は気丈な人ですが
時として気弱になります。

メガネをかけても
ぼやけているし

補聴器をつけても
十分聞こえない。

手だって何だか他人の物。

茶碗は落とすし
食べこぼしもする。

お茶だって
茶碗の外へ注いじまう。

新聞読んでもすぐ忘れるし

他人はもちろん
孫の名前も思い出せない。

手紙を書こうと
辞書引いたって

便箋に目を移したときには
もう忘れてる。

頭の毛は
ますます白くなってくるし

梳く度に抜けてくる。

母には

気弱になる理由が
山ほどあるのです。



だけどわたしは

母にはずっと
気丈な母でいて欲しい。

わたしが、幼かった日々

悪戯をしたわたしを

近所中追い掛け回した
あのまんまの母でいて欲しい。

弱気になられては困るのです。

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「あと何年・・・
生きられるかしら」

と、時々母が聞きます。

「お母さんだったら・・・
あと20年」

わたしはドキンとしながらも
即座に「きっぱり」答えます。

母は気丈な人ですが

いつお迎えが来るのか
やっぱり気がかり、心配なのです。

だけど、可愛そうに・・・

一緒に「老い」を生きる
友人がいません。

不安を語る仲間がいません。

親しい友は既に逝き

ともに戦い
慰め合う戦友がいないのです。

7.08.08awasete290sai-w360.jpg

 師範最後の友も逝き
  合計292歳 右が母96歳




7.08.08shihanjidai-w500.jpg

 師範の同級生
  前列右から4人目が母





「どっちが先に、逝くのかねえ」

笑いながら語り合っていた
師範学校最後の友も数年前に亡くなり

近所にいるのは
10いくつも年下の「若者」ばかり。

その「若者」達も
最近は出歩かなくなり

もはや

共に老い、不安を語り合える
戦友ではないのです。

そんなわけで

ここはひとつわたしが
太鼓判を押してやるしかない。

そう思ってわたしは

「あと20年」

と、そんな夢みたいな断言を
続けているのです。

  

いずみ野は

まだ、梅雨空


DSC05323-w260.jpg











だけど

ひまわりが咲けば、やっぱり夏気分

お母さんの笑顔に似てる

ひまわり

底抜けのあかるさ

ぼかあ

やっぱりすきだ
                       

母の一日は
起き抜けの体操で始まります。

母はこの60年間

毎朝30分以上

ラジオ体操に自己流のものを加えて
体操しています。

寝込んだ日を除けば
1日も欠かした事がないのです。

その上

トイレで座っている時には
暇に任せて
「グーチョキパー」と指の運動をしたり
首を回したり。

出てくる時には
入口の鴨居に手を掛けて
背筋を何度も伸ばしたりもしています。

 

でも・・・
そうやって毎日頑張ってきたのに

背中は大きく曲がり
手は後頭部に回せなくなりました。

だけど母は今日も
やっぱり体操を続けているのです。

一日休めば
昨日とどいた所にもうとどかなくなる

母はそう言うのです。

 

f0d4457cjpeg



 






98年間
生きて来た母の手。

訪ねて来た孫娘のミルカが
マニキュアを塗ってくれました。

母がどんなにうれしかったことか。
わたしがどんなに感謝したことか。
 

「最近、伸びるのが早くてねえ・・・」

爪を切ってやるわたしに
母がまいたび言います。

「そうかなあ・・・」
わたしもまいたび応えます。


爪が早く伸びるようになったのは

母が物に触らなくなった証拠。
仕事が出来なくなった証拠。

応えるたびにわたしは
ちょっと寂しくなるのです。

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