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娘たち
ほんとに感激していたのです。
だけど
わたしがちょっと
違和感を覚えたのは
娘たちの
度を越した感激振り。
余りにオーバーな
感嘆詞のオンパレード。
齢69の
シニカル親父には
こういう真似は出来ないし
ついて行けないのです。
もちろん
娘たちが人並み外れた
感激屋であることは
分かっているし
感嘆詞を吐くことで
楽しさや嬉しさを
増幅していることも
分かっているのです。
このわたしが
『お主、なかなかやるのう!
愛い奴、愛い奴』
と、ついつい感じ入ってしまった位
ウナギ屋のサービスが
素晴らしかったのも事実です。
だけど、娘たちに
こうも過剰に
『感嘆詞』を吐き続けられ
『念』を押されて
感激されたのではたまりません。
わたしはちょっと食傷気味
うんざりしたのです。
自分で言うのも
何なんですが
わたしはどちらかと言えば
『武士は食わねど高楊枝』
タイプの人間。
感激しても
余り表に表わさないのが
好みのやり方です。
だから、娘たちには
もうちょっと
あっさり感激した後
心静めて
ほんとのサービスを
楽しんで欲しかったのです。
娘たちは
ウナギ屋のサービスに大感激。
店にいる間中
いや、出てからも
感嘆詞を吐き続けました。
「わーっ!!凄い凄い!
おしぼりの
この心のこもった冷たさ加減!
これは絶対、冷蔵庫で
冷やしているのよね、ね、ね、ね!」
「わーっ!!凄い凄い!
冷茶のこの冷え具合!
この分量!」
「わーっ!!凄い凄い!
お代りを持って来る
このタイミングのよさ、よさ、よさ!」
「わーっ!!凄い凄い!
この器に、この盛り付け!」
「わーっ!!凄い凄い!
人生で、1度も味わったことのない
この匂い、この歯触り、このお味!!!」
「やっぱり
ぜんぜん違うわねえ!
これがミシュランなのよ!
これこそ、ミシュラン
星付の神髄なのよ!!!」
と、まあこんな調子で
感嘆詞のオンパレード。
「むむ、こりゃあ美味いなあ
この突出し!」
と、わたしがちょっと
口を滑らすものなら
「ね、ね、そうでしょう!!!
これがミシュラン、ミシュランなのよ!
ちょっとした物にも
心を込める
これこそ、ミシュランの
神髄なのよ!!!」
と、まるで
自分が鬼の首を取ったように
食事の間中感動しまくり
出てからも
「でしょ!でしょ!でしょ!
ご主人がわざわざ
通りまで出て来て
見送ってくれたのよ!
一見の客のわたし達によ!
こんなことって、考えられる?!」
と、感動しまくったのです。
くどいようですが
わたしは
このウナギ屋の一連のもてなしに
ほとほと感心したのです。
ウナギ屋には次女が
二条城から
電話で予約を入れました。
「今、混んでいますので
カウンターでよろしければ…」
ということだったのですが
この店
ただ者ではありません。
しばらくして
「個室をご用意できましたので
お待ち申しております」
と、わざわざ
電話をくれてもいたのです。
次女の予約電話への
応対に始まり
入って、食べて、帰る迄の
心のこもったもてなしに
わたしは心底
感じ入りました。
物事、斜に見がちな
わたしですが
『ウナギ屋っ!!!
お主、なかなかやるのう!
愛い奴、愛い奴!』
と、つい心の中で
言ってしまったのです。
皆さん
ご安心ください!!!。
京都にだって、まともな店が
あるんです。
聞けばこのウナギ屋
『ミシュランの一つ星』。
物知りの長女が
注釈付けてくれました。
わたしは
『ミシュラン』とか何とかいう
権威主義の
他人の味覚や評価には
心動かされない人間のつもりです。
だけど
清水坂の一件の後だけに
『ミシュラン』の格付けにも
それなりの
権威があるのかもなんて
気にもなって来たのです。
おしぼりの冷たさに
感じ入っていると
程よいタイミングで
女将が
お代りの冷水を持って
入って来ました。
それで
ウナギを4つ注文すると
女将は
「うな重、最初から
お分けして出すこともできますが」
と、言ったのです。
わたし達は5人の一行ですが
孫娘はまだ5歳。
次女と分け分けして
食べる予定だったのです。
それを見越してのさり気無い
女将の提案
わたしはほんとうに
感心したのです。
うな重の味も天下一品
わたしにさえ
その美味さは分かったのですが
な、何と帰りには
ご主人が
通りまで出てきて
見送りしてくれたのです。
出迎えから見送りまでの
さり気無い心づかいの数々に
わたしゃあほんと
感動したのです。
3時間の二条城見物を終えて
午後1時
わたし達はそこから800m程の
ウナギ屋に入りました。
暑い中
二条城の
だだっ広い庭園を歩き回り
その上
ウナギ屋まで
800mも歩いたものだから
わたし達は
頭のてっぺんから爪先まで
あっちっちのち。
ばてばてで店に着きました。
『ここでもまた
また、待たされるのかよ!』
と、嫌な予感に打ち震えながら
着いたわたしでしたが
驚いたことに
着くや否やさっと
クーラーの効いた座敷に
通されたのです。
驚くじゃあありませんか!
女将が何と
日差しの強い店の外にまで出て
待っていてくれたのです。
そして
手渡されたおしぼりが
これまた驚くじゃあありませんか!
何と冷蔵庫で
しっかり冷やされたもの。
火照った首筋が
一気に静まりました。
そうなんです!!!
これなんです。
わたしが求めていた
サービスってのは
こういうものなんです。
京都にだって
こういうことのできる店が
あるんです。
わたしゃあね
清水坂の甘味屋に
このウナギ屋のサービス
見せつけたかったですよ。
ほんとんとこ!