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「あっれ、まあ!
先生・・・
 
私のことが分るだけえ!
やだよう、分るだけえ!」
 
久し振りに訪ねて来たT子さんが
びっくりしたように言いました。
 
わたしと母が居間でしゃべっていると
 
同じ部落のT子さんが恐る恐る
ベランダから顔を覗かせました。
 
それを目ざとく見つけた母が
言ったのです。
 
「あらっ! T子さん、珍しいじゃないの。
中へ入って、お茶でもどう?」って。
 
「あっれ、まあ!
 
先生、私のことが分るだけえ!
やだよう、分るだけえ!」
 
「そりゃあ分るわよ
T子さんじゃない。
 
あんまり久し振りだから
忘れても不思議じゃないんだけどね」
 
母がちょっと皮肉を込めて答えました。
 
「いえね、先生!
 
K子さんがね
 
先生のとこへ行ったら「あんた誰?」って
言われたって言ったんですよ。
 
だから先生はもう、人の顔が分らないんだって
そう言ったんですよ。
 
そうですか、先生は私のこと
覚えてくれていたんですか」
 
T子さんはお茶を飲み始めても
まだ信じられずに、そう繰り返したのです。
 
老いたりとは言え、母には
まだ皮肉をいう気力があります。
 
「あんた誰?」と言った母は
 
K子さんにもっと頻繁に来てもらいたくて
皮肉を言っていたのです。
 
だけど、母は
100歳を超えています。
 
だから
言われたK子さんは即座に
 
「先生がボケた!」と
短絡してしまったのです。
 
そして
それを伝え聞いたT子さんも
 
「そうか、ボケたのか!」と
素直に信じ込んだのです。
 
世の中には、信じ込みたくなるような
状況ってあるものです。
 
でも・・・
本人にとっちゃあ
 
「ふざけないで!」って言いたくなる
状況でもあるのです。


(ボケって言葉を
使っちゃいけないんですが・・・)

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