忍者ブログ
[218]  [217]  [216]  [215]  [214]  [213]  [212]  [211]  [210]  [209]  [208
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「まったく嫌になっちゃう。
サホ達、どこにもいないのよ。
 
朝ご飯、一緒に食べようと思っているのに
どこにもいないのよ。
 
黙って帰っちゃったのかしら」
 
わたしがかけた電話の向こうで
母がむかっ腹を立てています。
 
母の所へ一昨日来てくれ
昨日帰った孫夫婦のことを怒っているのです。
 
「そんなこと言ったって
サホたちゃ昨日帰ったじゃない。
 
夕べメールくれたんだよ
楽しかったって。
 
お母さんと撮った写真だって
送ってくれたんだよ。
 
だから、サホたちゃ
昨日の昼過ぎにゃあ帰ったんだよ」
 
「じゃあ、夕べ
一緒にご飯食べたのは誰なのよ」
 
「誰なのよたって
僕に分る筈ないじゃない。
 
だけど、サホたちゃ夕方にゃあ
もう帰っちゃってたんだ。
 
ちゃんとメールくれたんだから」
 
「メールって何なのよ。
 
そう、手紙みたいな物なの。
だけどそれ、私にはくれてないわよ」
 
「いいんだよ、くれなくたって。
パソコンなけりゃあ、受け取れないんだから。
 
今、サホのメールを読んであげるから
ちゃんと聞いててよ。
 
じゃあ読むよ
読むから聞いててよ。
 
おばあちゃんといっぱいお喋りして
楽しいひとときを過ごしました。
 
お母さん、ちゃんと聞いてる?
 
聞いてんなら
ウンとかスンとか合いの手入れてよ。
 
じゃあ読むよ。
 
おばあちゃんといっぱいお喋りして
楽しいひとときを過ごしました。
 
おばあちゃんがとても元気で安心しました!
また近いうちに寄らせて頂きます。
 
ユウト、サホ
 
ね、お母さん分かった?
 
こう言って来たんだからね
サホたちゃ絶対挨拶して帰ってるよ。
 
だからお母さん
 
ヘルパーさんか誰かと
間違ってんじゃないの?」
 
「ヘルパーさんなんかと
間違わないわよ。
 
ともかく、私は
夕べ誰かと一緒にご飯食べたのよ。
 
今朝だって
いつもより早く目覚めたんだけれど
 
起しちゃあ悪いと思って、ずうっと
ベッドに入っていたのよ。
 
それでも7時半に起きて
今まであっち捜したり、こっち捜したり。
 
10時半になってやっと諦めて
今、ご飯食べ始めた所なの」
 
「何で3時間も探し回るのよ。
家ん中、そんなに広くないじゃない」
 
「百寿舎へ行ってみたり
トイレ覗いたり
 
サンルーム覗いたり
2階の入口覗いたり
 
2度も3度も捜してみるんだから
それ位かかるのよ。
 
じゃあ結局
私がボケちゃったって言うこと?」
 
「ボケたんじゃないさ
ちゃんぽんになっただけさ。
 
気にするこたあないよ、お母さん。
 
早い人は
60代だってそう言う事があるんだよ。
 
僕だってそうさ。
 
今誰と、何話してんだか
分らないんだから」
 
「そんなこと言ってくれたって
嬉しくなんかないわよ。
 
まったく嫌になっちゃう
自分が馬鹿になっちゃって。
 
やっぱり一昨日の晩のことと
ごっちゃになっちゃったのかしらね。
 
もう、私駄目なのよ
ほんとに終わり、もう終わりだわ」
 
母がため息の上に
ため息をつきました。
 
母は一昨日の晩
孫夫婦と食事をしたのです。
 
だけど
 
その孫夫婦が昨日帰ったことを忘れて
朝から探し回っていたのでしょう。
 
こんなことが母に、時々
起こるようになっています。
 
歳を取ると段々、出来事の後先が
はっきりしなくなって来るものです。
 
その上、その出来事全部が
ごっそり抜け落ちてしまうこともあるのです。
 
それが分っているのに、わたしは
母を追い詰めてしまいました。
 
それで今、また反省しきり
うなだれているのです。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
忍者ブログ [PR]