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わたしが炬燵で
転寝をしていた時のこと

電話が鳴って
母が受話器を取りました。

「もしもし、乙女です。
どなた?」

と、母が聞きました。

「手の届く介護の宮川です。
息子さんおられますか?」

ボリュームを上げた電話から
ヘルパーさんの声が聞こえます。

だけど
母には聞こえません。

「どなた?

私は耳が遠くて
よく聞こえないんです。

もう少し、大きな声で
言ってもらえませんか?」

と、母が繰り返しました。

「息子さん、おられませんか?」

電話の向こうでも
宮川さんが繰り返しました。

「お母さん!
僕への電話だから、僕が出るよ」

見かねたわたしがそう言って
手を出したのに

母は首を振って
受話器を渡しません。

そればかりか
こう言ったのです。

「ああ宮川さんですか。
息子はいません。

今出かけたところです」

驚いたわたしは
母から受話器をもぎ取って

先ず謝ったのです。

「宮川さん、すいません。

ちょっと
母のスイッチが切れまして」

宮川さんとの
要件を済ませたわたしは

改めて母に聞きました。

「お母さん!

何故、僕がいないなんて
言ったのさ。

僕はいたじゃない。

しかも、僕への
電話だったじゃない!」

「だって折角兄ちゃんが
寝てたんだもの。

寝かせておかなきゃ
可哀想だと思ったのよ」

と、母は
そう澄まして答えました。

母のスイッチは
切れていたどころか

ばっちり入っていたのです。



母心とはほんと
いくつになっても

尽きせぬ愛の泉です。

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