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「まったく嫌んなっちゃうわ。
お母さんたらふざけてるのよ!」
 
長姉がわたしの所へ来て
言いました。

それより30分ほど前のこと
 
仕事をしたかったわたしは
自分だけ食事を終えると
 
未だ食事中の母と長姉に言ったのです。
 
「お母さん!
 
翔子姉ちゃんと積もる話しをしててよ。
僕は向こうへ行くから」
 
わたしは久し振りに来た長姉に
母を託したのです。



「じゃあお母さん
積もる話でもしましょうか!」
 
わたしに言われた長姉はそう言って
母に話しかけたんだそうです。
 
だけど母は
口をもぐもぐさせて食べているだけ。
 
もぐもぐが終わると
 
また次のもぐもぐの種を口に入れ
もぐもぐを続けたんだそうです。
 
姉が何を話しても、上の空。
 
わたしが席を立ってから20分も
もぐもぐを続けていたんだそうです。
 
そしてやっと
もぐもぐが終わったと思ったら
 
開口一番言ったんだそうです。
 
「じゃあそろそろ
翔子さんの法螺話でも聞いてやろうかしら」
 
って。
 
長姉は確かに
法螺話が得意なのですが
 
 母の応対に
やっぱりがっくり来たのです。
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母とわたしのやり取りを
聞いていた長姉が言いました。

「話してるたって太郎!

太郎はお母さんのこと
ああでもない、こうでもないって

ただ注意してるだけじゃない。

そんなのが会話なの!?

そんなんでいいのなら
私にだって話せるわよ!」

と、安心したように
言いました。

「お母さんとこに来たって
いいんだけどね。

家族のことを話し終えたら
もう話すことが無いのよ。

だってそうでしょ。

テレビの話をしたって
雑誌の話をしたって

お母さんはもう
興味が無いんだもの。

みんなは一体、何話してるのよ」

と、長姉はいつも
不思議がっていたのです。

たまにしか来ない長姉は
母との話題に困っていました。

何を話したら
母が乗ってくれるのか

分らないのです。

そんな長姉だから

母の所へ来ても
最初にちょっと話すだけ。

後は炬燵に寝転んで
ずうっと雑誌を読んでいます。

だから母が不満を言うのです。

「翔子が来てくれたって
ほんとにつまらないのよ。

話もしないで
本読んでるだけだもの」って。



そんな長姉が
母とわたしのやり取りを聞いて

自信をもってくれたのです。

「あんな会話でいいの?!

そんなんでいいのなら
私にだって話せるわよ!」

って、そう言ってくれたのです。

もちろんわたしは

『注意ばかりの会話』でいい
と、思っているわけではありません。

だけど黙っているより
注意でも何でも

言葉を交わすことの方が
遥かにいい

と、そう考えてはいるのです。

この正月、何十年振りかで
長姉と一緒の日々を過ごしました。
 
 
 
ある朝、長姉が
 
「お早う!」とか何とか言いながら
障子を開けて居間に入って来ました。
 
「お早う!」
 
と、応えながら長姉の方を見ると
閉じた障子の後ろが開いています。
 
それでわたしは言ったのです。
「左側、開いてるよ」って。
 
素直な長姉は直ぐに直しました。
 
だけど
今度は反対側が開いてしまったのです。
 
それでわたしは、また言ったのです。
「今度は右が開いちゃった!」って。
 
2度まで注意された長姉が
障子を直しながら言いました。
 
「ねえ、ちょっと待ってよ。
 
太郎が2秒待っててくれれば
私は自分で気が付いて直すのよ」って。
 
そうなんです。
 
母と一緒にいる時間が長い所為か
わたしはちょっと焦り気味。
 
 
転ばぬ先の杖と
何でも先回りしてしまうのです。
むかし
 
ふぞろいの林檎たち』
って、テレビドラマがありました。
 
そのドラマには
まったく関係ありませんが
 
『ふぞろいつながり』で
わが家の『ふぞろいな餅』の話を一席。
 
わが家の正月の餅は毎年
3女一家が総出で搗いてくれてます。
 
その餅が
 
『ふぞろいな林檎たち』
じゃあないけれど、結構ふぞろい。
 
厚さも違えば大きさも違います。
 
もちろん
原因はこのわたし。
 
「食べてしまえば、形なんて関係ない。
だから、適当に適当に」
 
っと、要望しているからです。
 
「折角搗くんだから見栄えよく
厚さも大きさも揃えようよ!」
 
と、数学系気質の3女一家は言うのですが
わたしが断固要望しているのです。
 
なぜかと言えば
 
『食べてしまえば、形なんて関係ない』
っていう正当な理論も勿論ありますが
 
3女一家に
余り負担をかけたくないと
 
わたしが少し
気を使っているからでもあるのです。
 
 その餅を
松があけて遊びに来た友人・Nにやると
 
翌日メールが来ました。
 
Nのメールです。
 
 
 
君にもらった餅を、朝はぜんざいで
昼はストーブで焼いて食べた。
 
店で買った餅とは大違い
田舎の懐かしい味がした。
 
僕が生まれて初めて作った
白菜漬の味とも良く合って
 
昨日遊びに来た妻も
美味しい美味しいと褒めている。
 
その味より
もっと気に入ったのがその形。
 
大きさも厚さも
ふぞろいなところが超一流。
 
なぜって
餅が順繰りに焼き上がったんだ。
 
だから、こんがり焼けた奴を次から次と
間を置かずに食べられた。
 
 
 
「餅が順繰りに焼き上がった」
というNの報告
 
『ふぞろいな餅』には
そういう効能もあったのか!
 
と、わたしは目から鱗です。
 
「ふぞろいでいい!」
 
と、言い張るわたしにだって
多少の引け目がありました。
 
だけど
Nのお陰で理論補強ができたのです。
誤嚥性咳き込み

そんな言葉が
あるかどうかは知りません。

だけど母は

食べた物、飲んだ物が
気道に入ってしまい

時々酷く咳き込むように
なりました。

ご飯を食べている時など

何気なくしゃべった途端
咳き込みます。

お茶を飲んだ時でさえ
咳き込む事があるのです。

眉間にしわを寄せ
額に血管を浮き上がらせ

硬く閉じた目尻に
涙を滲ませ

首のあらゆる筋を
浮き上がらせ

顔を真っ赤にして
咳き込むのです。

咳き込みは
ほんとに長く続きます。

仰向いて咳き込むので

一度気道から出た異物が
また入っているんじゃないか

と、思うくらい続くのです。

背中をさすった方がいいのか
悪いのか

叩いた方がいいのか
悪いのか

周りにいるわたし達は
あれこれ考えるだけ

なす術がありません。

ただじっと
咳が静まるのを待つばかり。

「死ぬかと思った!

こうやって
死んで行くのかしらねえ」

と、母がゼイゼイ言いながらも
一段落して

そうしゃべりだすのを
じっと待つしかないのです。





妻が買い込んできたのが
写真の「巻き笛」。

738e9cc3.jpeg






子供の頃
縁日で買って遊んだ

『吹けば
ピューと鳴りながら伸びる』

あのおもちゃです。

594d11e8.jpeg

母はこれで今毎日
口と肺の鍛錬をしています。

そして心なしか

母の咳き込む回数が減った
ように思える

今日この頃です。
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