忍者ブログ
[4]  [5]  [6]  [7]  [8]  [9]  [10]  [11]  [12]  [13]  [14
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

一生園に行くとわたしは
母との会話の合間に
 
姉妹にメールを送ります。
 
それはわたしの退屈しのぎになったり
母の近況報告になったり
 
情報交換の場になったりします。
 
 
 
ある日、心配性の真正4女・瑠璃から
メールが返って来ました。
 
『連日
ご苦労様です。
 
月曜日から
芽衣子さんが行くようですね。
 
私は25日から。


お母さんに異変があった時の段取りを
どこかに書いておいてください。
 
夜中、一人だと心配です。』
 
 
わたしは直ぐ
返事を送ってやりました。
 
実家に誰もいない時でも
来てくれる瑠璃は
 
わたしの介助分担計画にとって
本当に貴重な戦力。
 
心細いからって
来なくなられちゃ困ります。
 
だって
 
長姉の翔子や妻の晴子なんて
実家の夜がひとりじゃ怖いからと
 
誰もいない時にゃ、来やしないんです。
 
「怖い事なんか、何にもないじゃあないか!
気力が足りんよ、気力が!」
 
とは言ってみていますが、怖いものは怖いらしく
この二人はいっつも二人で1セット
 
示し合せて一緒に来るので
頭数としちゃあ二人でも
 
実態は半戦力
瑠璃にそうなられちゃあ困るのです。
 
 
『安心しな、瑠璃!
お母さんはまだまだ大丈夫。
 
しかも
 
仮に何かあったとしても
連絡は夜中にゃ来ない。
 
連絡は早くても早朝だよ。
 
一生園が医者の手配から
見送りまで
 
朝までの間に
責任もってやってくれるんだ。
 
しかも、その連絡は先ず僕に来て
次に芽衣子に来ることになっているだから
 
全く心配ない。
 
瑠璃にゃあ、僕から連絡するんだから
まあ安心してなって。』

PR

一生園に行くとわたしは
母との会話の合間に
 
姉妹にメールを送ります。
 
それはわたしの退屈しのぎになったり
母の近況報告になったり
 
情報交換の場になったりします。
 
 
 
『ありがたいことに
今日のお母さんは平熱です。
 
かなり多めの食事を完食したあと
水羊羹1個とばなな半分を食べ
 
まだ食べたそう。
 
お母さんは、そのほとんどを
自力で食べました。
 
『お母さんは食べるの上手だね』
って誉めると
 
『そんなでもないけどね』
と、目でうっすら笑って答えました。
 
今は食べ終わり
うつらうつらしています。
 
食事中に
 
水っ洟がたれて来たり
涙が出たりするので
 
いつも注意していて
拭いてあげてください。
 
だけどこれって
他人事じゃあないんだよね。
 
気がつきゃ僕らだって
 
ご飯粒付けてたり
水っ洟がたらしてたり、涙が流してたり。
 
自分じゃ気がつかないことあるからね
お互い注意し合おうね!
 
ああそれとさ
涙で目尻がただれている時は
 
事務室に預けてあるタリビット眼軟膏
点けてやってよね。』

一生園に行くとわたしは
母との会話の合間に
 
姉妹にメールを送ります。
 
それはわたしの退屈しのぎになったり
母の近況報告になったり
 
情報交換の場になったりします。
 
 
 
『11時に一生園に来て
 
『おはよう!』と声をかけながら
顔を覗き込むと
 
何とお母さん
口を半開きにしたまま
 
だらだらとよだれを流しているじゃあ
ありませんか!
 
僕は一瞬
 
『脳梗塞でも起こしたか!』
と、どきっとしました。
 
一緒にいた牛田リーダーも驚いて
 
『飛来さん、どうしたの!?
気分悪いの?』って
 
僕と顔を揃えて
お母さんに声かけしました。
 
半開きのお母さんの口からは
次から次
 
止め度もなく
よだれが流れ出します。
 
唇の間からは
前歯が競り出して来ています。
 
お母さんは
 
口をふがふがさせているだけで
言葉を発しません。
 
牛田リーダーが濡れタオルを持ち出してきて
よだれを拭き口を開けました。

そこで見たものは
 
何と
歯茎に収まっていない上顎の入れ歯。
 
お母さんは
 
収まっていない入れ歯を
自分では直せず
 
かといって
人を呼ぶこともできず
 
ただひたすら
よだれを流し続けていたのです。
 
僕らは一安心。
 
僕はお母さんの車イスを押して
2階の食堂へ向かいました。
 
『飛来さんの入れ歯
ちゃんと入っていなかったじゃない!』
 
後ろで部下を叱る
牛田リーダーの声がしていました。』
 
 
 
3女の芽衣子から早速
返信がありました。
 
『辛かっただろうね、お母さん!
 
自分じゃ直せないし、話せないし
訴えられないんだから。

でも、牛田さんは
ほんとによくしてくださるわね。

今度行ったら、感謝を伝えます。』
一生園に行くとわたしは
母との会話の合間に
 
姉妹にメールを送ります。
 
それはわたしの退屈しのぎになったり
母の近況報告になったり
 
情報交換の場になったりします。
 
 
 
『今日のお母さんは
まあまあ元気。
 
食欲はあるけれど
昨日も午後熱が出て抗生剤で対処した。
 
今は熱が下がっていて
ご飯を自分で食べてる。
 
バナナも1本完食。
 
今度熱が出た時も抗生剤で
下げてもらうことにした。
 
種々あっても
無理な延命処置はせず
 
人生園の嘱託医の対応に任すと
明日署名する予定です。』
一生園に行くとわたしは
母との会話の合間に
 
姉妹にメールを送ります。
 
それはわたしの退屈しのぎになったり
母の近況報告になったり

情報交換の場になったりします。
 
 
 
『今
一生園の嘱託医を待ってるとこ。
 
来られたら
何かあった時のために
 
お母さんの終末期医療について
こちらの希望を言って相談します。
 
一昨日からの
お母さんの熱は下がりました。
 
久し振りにお風呂に入り
昼飯をしっかり食べ
 
今は眠っています。
 
一生園では食事が終わるたびに
入れ歯を外します。
 
だから
 
眠っているお母さんの顔は
哀しくなるほど衰えて見えます。
 
部屋には、集会所から
ラジオ体操が流れて来ています。
 
つい一年前までは
お母さんだってやっていたのにと
 
何か不思議な感じ。
 
人間の寿命って
ほんと不思議だよね。』

<< 前のページ 次のページ >>
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
忍者ブログ [PR]